「年相応です」と言われ、本人はニコニコ
メディア等では、「認知症」と一括りにされますが、症状やレベル感はひとそれぞれ。我が家の場合、15年ほど前に死んだ父が認知症で、娘の顔もすっかり忘れてしまうほどでしたが、大人しくひとりで留守番できたし、トイレも最後まで自分で行ってました。介護は楽ちんな、優良ボケ老人(笑)でした。仲の良かった弟に先だたれ、ガクッと落ちてしまった記憶があります。母は、まったく違う感じです。
物忘れが度を過ぎている場面もありますが、日常生活が普通に送れているので、医者に行くとかは1ミリも考えていませんでしたが、母の認知機能について医学的なデータが必要になり、6月にいわゆる「物忘れ外来」に行って来ました。何を言われるか、おそるおそるでしたが、結果からいうと、良かったです。結論は、「認知機能の低下はみられるが、年齢を考えれば正常です」。年相応で、病気というほどじゃないから、病院は来なくて大丈夫ですよと言われて、母はニコニコしていました。本当は心配だたんでしょうね。「年齢を考えれば」だから、もし今の状態で60歳なら病気な訳なんですが(笑)。ものはいいようですね。認知機能の弱いところを数字で見せてもらえて、すっきりしました。
認知症スクリーニングは正常、でも「記憶」「理解」に異常アリ
行ったのは都立松沢病院の「物忘れ外来」。脳のMRI撮影と、心理検査のほか、血液検査、心電図やレントゲンなど内科の検査も受けました。体全体をトータルに見るのがこの病院の方針だそうです。さて、心理師による心理検査の結果です。
まずは、一般的な認知症のスクリーニング検査。日本版MMSEーJの検査結果は、28点満点中、25点。23点以下が認知症の疑いありになりますので、見事、正常範囲でした!!
日本語版コグニスタット(COGNISTAT)。能力別に障害の程度を調べる検査で、母の場合、10項目のうち、8項目は正常でしたが「記憶」「理解」が異常。
新しい情報を記憶する力が、弱っていて、その結果、「理解」も低かったということです。
以下の「理解」のテスト結果です。
①鉛筆を持ってください→正答
②床を指してください→正答
③鉛筆を渡してください→正答
④鉛筆を指して、その後、鍵を自分の手にとってください →遂行不可
⑤紙を渡してください。そして、お金を指してください。→遂行不可
⑥鍵を指してください。鉛筆をとってください。そして、お金をとってください。→遂行不可
短期記憶が弱っているので、言葉の意味はわかっても、一つの指示には従っている間に次の指示を忘れてしまって、2段階、3段階の指示を遂行することができないということです。
医師から説明を受けて、「私になんか言う時は、一つひとつにしてね」と言っていました。母がほとんど台所にたつことがなくなっていたのは、億劫になっていたのではなく、複雑な料理の行程をこなせなくなっていたから、料理ができなくなっていたからだと私は理解できました。できないことは、無理強いしないようにしないといけないですね。
検査結果は、「取り説」的な効果があるので、親の行動の意味が分からないでカリカリしてるという方は、検査してみると科学的に状況が把握できていいと思います。
本人が前向きに受け止められかどうかは、医師の説明次第だと思います。うちの場合も、「もう歳だから、物忘れは治らないので、これ以上、病院に来ても無駄です」という言い方だったら、母も傷ついたと思います。ベテランの先生は、診察室に入った瞬間から、言葉選びが素晴らしく、世間話のように気軽に本人に話させながら必要なことを観察されていて、とても感心いたしました。(整形外科の先生は、耳が遠い母を面倒がって、付き添いの私とばかり話したがります)
行ったのは、世田谷区にある都立松沢病院の精神科(物忘れ)です。東京都の認知症疾患医療センターの指定を受けています。完全予約制で、受診予約は、社会復帰支援相談係03-3303-7211。